プロポーズは突然に。
ダイニングテーブルで向かい合うようにして座り、話に花を咲かせながらコーヒーのお供に、と出してくれた芽衣子お手製のバタークッキーを食べる。
家事と育児大変なのに、お菓子まで手作りしちゃうなんて芽衣子すごいなぁ、と感心するばかりだ。
「桃華、仕事はどう?」
「うん、忙しいけど楽しくやってるよ。最近指名してくれるお客様も増えてきたんだ」
「へぇ、頑張ってるんだね」
いいなぁ、と少し遠い目をした芽衣子は自分のマグカップをキュッ、と握りながら笑う。
いつも明るく笑うはずの彼女の笑顔が、今日は少し寂しげに見えた。
「芽衣子……どうしたの?」
「ん?んー…大したことじゃないんだよ?桃華からしたら、そんなこと?ってなるような話だけど…聞いてくれる?」
「うん、もちろん」
私の返事に軽く微笑んだ芽衣子は、あのね…と、俯き加減で話し始める。
「結婚なんてしなければ良かったって…最近思うんだよね」
「え…?」
「なんか思ってたのと違うっていうか…」
「…」
結婚に憧れる人であれば誰もが羨むような幸せな生活をしているはずの芽衣子のその言葉には吃驚した。
だって今の芽衣子は幸せの絶頂にいると思っていたから。
好きな人と結婚をして、可愛い子供を授かって、こんなに素敵なマイホームを手に入れて…
玄関に飾られている写真の中の芽衣子だってすごく幸せそうに笑っていたのに、一体どうしてそんな気持ちになるのか。
結婚に興味も憧れもない私が幾ら考えてみたところで答えは分からない。