プロポーズは突然に。
「クマができてる。寝不足か?」
「はい。昨日は全然落ち着かなくて眠れませんでしたから」
グイグイと顔を持ち上げる彼に対抗するように皮肉混じりに言ったつもりだけど、顔色一つ変えないところを見るとそんなものは通用しないらしい。
「じゃあ隠すか。うちの父はそういうところをよく見る人だから」
「このままで構いません。化粧ポーチも持ってきていませんし」
「それは問題ない」
彼は左手を私の頬に添えたまま、右手で足元に置いてあるコスメボックスを探り始める。
取り出したのはリキッドタイプのコンシーラーだった。
コンシーラーをブラシで取ると手の甲で量を調整しながら私の目の下に少量乗せ、軽く叩き込むようにスポンジで馴染ませていく。
その技術も仕上がりの早さもプロ並みだ。
「これはうちの新商品。ファンデーションの上からでも綺麗に馴染むメイク直し用コンシーラーだ」
「…わざわざありがとうございます」
「目元はこれでいいとして…口紅は?」
「え?」
「プロポーズした日と商談の日。おまえはうちの口紅を塗ってただろ?」
その言葉には思わず目を見開いてしまった。
いくら自分の会社の商品だからって見ただけで分かるなんて…