秘密の恋は1年後
「あー……本当に腹減った」
「すぐに作りますね。キッチン、お借りします」
「借りるじゃなくて、今日から好きに使いなさい」
「はい」
微笑みつきの返事に、らしくなく胸が締め付けられた。
こんなにひとりの女に入れ込むのは初めてだし、彼女の笑顔の破壊力は抜群だと体感する。
出来上がるまで、リビングで経済本を読む。
次第に漂ってきたスパイシーな香りに食欲が刺激され、思わずキッチンに立った。
「圧力鍋があったので助かりました。あと少しでできますよ」
「結構揃ってただろ? 全部、結衣ちゃんからの引っ越し祝いなんだ。一度も使ってないけど」
「そうだったんですね」
圧力鍋のタイマーが残り時間を刻む間、野菜スティックを作る彼女の横顔を眺める。
「社長は、きゅうりがお好きなんですね。ふたり分なのに五本も買うなんて」
「……社長?」
「あっ」
思い出した様子で、彼女は包丁を持つ手を止めた。