秘密の恋は1年後

《あっ、でも忙しいって分かってるので、今のは私の我儘で》

 俺がため息をついたと思ったようで、慌てて取り繕うようなことを言う彼女が愛しいと思った。
 構ってほしいなんて、我儘でもなんでもない。
 俺を必要としてくれてる証拠だし、解決には至らなくとも、思い悩んでいた心がスッと軽くなるようだった。


「じゃあ、来る?」
《どこにですか?》
「福岡」
《えっ、今からですか!?》

 真に受けたようで、驚嘆が伝わってくる。今からなんて無理に決まってるのに。


「冗談だよ。バーカ」
《そ、そうですよね。びっくりさせないでください!》

 俺にからかわれたのに、彼女は笑って楽しそうだ。
 もし今、一緒にいたら、間違いなく抱き潰しているだろうな。


「明日もあるから、そろそろ寝るわ。おやすみ」
《おやすみなさい。……あ、あのっ》

 終話しようと携帯を耳から話したら、引き留める声が聞こえた。

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