秘密の恋は1年後

 再来週から始まる社員研修について大詰めだ。
 対象者がいる各部の部長やマネージャーからの意見を反映していたら、意外に時間がかかり、あっという間に夕方になっていた。


 今日中にやらなくてはいけない仕事は終えていたので、ほぼ定時で席を立つ。
 他の部の社員や、社屋内にあるグループ企業の社員に紛れて、エレベーターに乗った。

 そういえば、少し前に尚斗さんとエレベーターで乗り合わせたなぁ。
 見つめて微笑まれただけでドキドキしたあの瞬間、社内恋愛の醍醐味みたいなものを体感した気がしたんだった。

 今は誰にも知られていないからいいけれど、もし知られてしまったら?
 こうしてエレベーターに乗っている間も、周りの人は私を見る目をどんな色に変えるんだろう。

 やっぱり、尚斗さんのような人に相応しい女性になるには、もっと努力しなくちゃ。
 家事ができるだけじゃなく、仕事もきちんと評価されたいし、胸を張って彼の隣にいられるようになりたい。

< 176 / 346 >

この作品をシェア

pagetop