秘密の恋は1年後

「なかなか際どいね……」
「そ、そういうシーンばかりじゃないですよ? そこに至る経緯がよくて読んでるんですから!」
「へぇ、そう。相変わらず、随分と色っぽいミステリーだな」

 まさにヒロインとヒーローが激しく愛を確かめ合うシーンだったので、読みながらドキドキしていたのは否めない。
 だけど、またしても彼に読まれるなんて不覚だった。
 数か月前、会社で彼に拾われた時に言われた意地悪を思い出させられて、つい言い返したくなる。


「知識はあるのに実際はウブ。お前のそういうところがそそるんだよ」
「な、なんのことですかっ!!」
「あはははは! あー、腹減った」

 私の顔は窓に映っているのを見ただけで真っ赤だと分かる。
 そんな私を横目に、彼はグラスを手にダイニングチェアに座ってしまった。

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