秘密の恋は1年後
「なにか食べますか?」
「あぁ、そうだなぁ。要らないって言ったのに悪いけど、軽いものがいい」
「わかりました」
お茶漬けと鮭の塩焼き、ポテトサラダくらいならすぐに準備できるだろう。
パパッと夜食の献立を決めてキッチンに行こうとしたら、書斎から出てきた彼に後ろから抱きしめられた。
「まひるを食べようかな」
「そ、それは、どういう」
「どうって、そういうことだろ」
「お、お茶漬けと鮭の塩焼きとポテトサラダにしようと思ってたんですが」
「……じゃあ、お前はあとでいただくことにするよ」
またしても耳にキスをした彼は、私を追い越して先にリビングに入っていった。
「先にビール置いておきますね」
「ありがとう。まひる、さっきまでなにしてた?」
「……あっ!!」
彼の手には、私の読みかけの小説がある。それも、ご丁寧に栞を挟んでしまったことに後悔した。
「よ、読まないでください!」
取り返そうとする私から遠ざけるように立ち上がり、リビングを歩きながら栞のページを黙読する彼は、とても楽しそうだ。