秘密の恋は1年後

 手作りケーキも美味しいと褒めてもらえて、私も満足だ。


「こんなに楽しい誕生日、いつぶりだろうなぁ」

 カットしたケーキを食べた彼が、背もたれに大きく身体を預け、シーリングファンが回る天井を見上げている。


「去年じゃないんですか?」
「そんな最近じゃないよ。しばらく仕事中心で、誕生日なんて忘れて過ごして、数日後に気づいて……。あぁ、でも母親が連絡くれたりしてたけど、それも留守電だったりして」
「そうだったんですね。じゃあ、もっと楽しい誕生日になるようにしましょう!」
「ん?」

 ソファの後ろにこっそり用意しておいたプレゼントの包みを渡す。


「きっとすごく気に入ってくれるかなって思って……」
「物はいらないって言ったのに」

 そう言いながらも、包みを開けた彼の表情は一段と明るさを増した。


「センスのいいタンブラーだね。ありがとう」
「尚斗さんと一緒に、ここでお酒を飲む時間を大切にしたくて」

 自分の分も取り出して見せると、「またお揃いかよ」と言って笑ってくれた。

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