クールな社長の耽溺ジェラシー


「あ、あのときは……」

美人な高羽さんに嫌味を言われて、へこんでしまったときだ。

新野さんはなにも悪くないのに、自信のなさが原因で心配をかけてしまっていると思うと、さらに自己嫌悪に陥りそうだ。

「変更の話、本当は明日でもいいかと思ったんだけど。……どうしても小夏の様子が気になって」
「私……?」
「電話とかメールより、直接顔が見たいと思ったんだ」

気にかけてもらって申し訳ないと思うのに、矛盾するかのようにじわじわと幸せな気持ちにもなる。

「ありがとうございます」

感じた嬉しさのままに笑顔を向けると、新野さんが唇を寄せてきた。

「っ、に、新野さん……! こ、ここ会社……」
「かわいいからしたくなった」

あまりにも平然と答えるから、私の反応が大袈裟なのかと考えてしまう。

「我慢しようと思ったんだけどな、無理だった」

名残惜しそうに親指で唇をなぞると、もう一度キスをされた。

今度はお互いの気持ちを強く伝え合うように深い口づけを交わす。

慣れないキスもされるがままになっていると、戸惑いも焦りもあっさりと消えて、頭の中が新野さんでいっぱいになった。

「あの女に嫌味でも言われたのかもしれないけど、それなら気にするなよ」

唇を離すと、じっと見つめられた。

「なんでそれを……」
「だいたい想像つく。なぁ、今度から誰になに言われたとしても、信じるのは俺の言葉にしてほしい」
「はい……」

そうだ。自信がなくて不安に襲われたとしても、新野さんが私のそばにいてくれる限り、私はそれを信じたらいい。


< 113 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop