クールな社長の耽溺ジェラシー
七章:
「こんな感じでいいかな……」
新野さんとデートの約束をした休みの日。新しく買ったワンピースを着て、鏡の前でひと回りすると、仕事のときとは違う自分に仕上がっていた。
「どこに行くか聞けばよかったかな」
行きたい場所を聞いてくれたけれど、いいところが思いつかなくてお任せにした。だから、この服装で大丈夫な場所なのかわからない。
「さすがにこの格好で山登り、とか言われたら厳しいけど……ないよね」
膝丈のスカートの裾をつまみ、鏡に映った自分を見つめた。
胸元で絞られたAラインのワンピースは柔らかな桜色をしていて、袖口はふんわりとしたデザインになっている。
小ぶりのバッグと高めのパンプスを合わせ、髪はゆるく巻いてハーフアップにした。メイクもいつもより気合いが入り、まつげは元気よくあがっている。
恥ずかしいくらいデートを意識した格好は、すべて新野さんから“かわいい”のひと言を引きだすための努力だった。
褒めてもらえますように。そして、惚れ直してもらえますように!
少しだけ緊張していると、テーブルに置いていたスマホが着信を告げた。画面には新野さんの名前が表示されている。
「も、もしもし」
≪着いた。下で待ってる≫
「わかりました、いま行きます!」
電話を切ると、スマホをバッグに入れて慌ただしく部屋を出る。新野さんの車へ近づくたび、鼓動は激しく刻みだした。