クールな社長の耽溺ジェラシー
カフェから出ると、再び照りつける日差しの下を歩きだす。ゆっくり足を進めているのに、それでも汗が噴き出てきた。
「あの……ありがとうございました。お話、すごく励みになりました」
「……そんなつもりでしたんじゃない」
頭を下げると、新野さんはくすぐったそうに首裏をかいていた。
最初は真顔のイメージしかなかったのに、今日だけでいろいろな表情を見られている気がする。
「新野さんも、何度もやり直していまのポジションを掴んだんですね」
「いまのポジション?」
「照明デザイナーの若手ナンバー1というポジションです。新野さんが載っていた雑誌の見出しにもそう書かれていましたよ」
いまはまだ“若手”の肩書きがつくけれど、それもすぐになくなるだろう。
それくらい、話題になっている。だから本人も自覚があると思ったのに、新野さんは怪訝そうに眉を寄せた。
「そんなもの、なった覚えがない」
「覚えがなくてもなってますよ。いやですか? 若手一位」
「ああ、いやだな。なりたいと思ったこともない。一番ってことは、一番上だろ? 誰かがつくった光を見て面白いと思いたいし、新しい発見がしたいのに……それを感じなくなるなんてつまらないだけだ」
ため息まじりに話す新野さんに、思わず首をかしげてしまう。
「一番がつまらないって……新野さんって不思議な人ですね」
もっと新野さんの立場になって考えればわかるのだろうか。新野さんの感覚を理解したいのに、全然わからない。