クールな社長の耽溺ジェラシー
「高塔さんも惜しかったね」
表情は笑顔。だけど、目の奥が笑っていないように見えて、怖くなって顔をそらした。
「いえ、惜しいと言っても広瀬さんのものと全然違いました。基本的な考え方は一緒ですけど、私よりももっと並木通りが輝いて見えて……圧倒されました」
この結果を受け止めているし、悔しさなんてとっくに飛び越えているからもっと明るく振る舞えると思っていた。
それなのに、苦笑まじりになって、言葉に残念な気持ちがにじみ出る。
明るく語れなかったのは、私よりも正司さんが不満足そうに見えたからだった。
私が話すのをじっと聞いてくれていた正司さんを上目で窺うと、苦しそうに眉を歪ませていた。
案が通らなかったことに悔しさはない。けれど、後悔ならたった今した。正司さんにそんな顔させたくなかった、という後悔を。
「今回は残念でしたけど、次……頑張ります」
どうしたら正司さんが満足してくれるのかわからなくて、マニュアル通りの反省の弁を述べると、ちょっとだけ頬をゆるめてくれた。
「高塔さんは案外強いんだね」
「強い、ですか……?」
首をかしげると、正司さんは私の視線を遮るようにコーヒーをあおった。
「なんでもないよ」
そのひと言でボーダーラインを引かれたと察した。自分とは違う、という線を。それがどういう意味なのかまでわからないけれど。
「そうだ、来週は新野くんと施工業者をまじえて、打ち合わせがあったよね。僕はほかの仕事が入りそうだから、そっちを優先するよ。新野くんがいれば大丈夫だと思う。それじゃ」
「え、正司さ……」
私が引き止めるのに気づかなかったのか、それとも無視をしたのか。正司さんは飲み干した紙カップをゴミ箱に捨てて去っていった。