クールな社長の耽溺ジェラシー
翌週の打ち合わせは、正司さんが言った通り新野さんの説明でスムーズに進んだ。
用意していた模型がここでも役に立ち、イメージがきちんと伝わったので思い通りのライトアップができそうな気がした。
「では、次は現場で。お疲れさまでした」
人のよさそうな顔をさらにほころばせた施工業者を廊下で見送り、新野さんや広瀬さんとともにもう一度会議室へ戻る。
「小夏、さっきの修正案をとりあえず反映して、データを出してくれ。それを見て、どうするか考える」
「はい」
「じゃあ、俺はべつの打ち合わせあるんで失礼しますね。資料は人数分コピーしておきますんで」
「頼む」
新野さんがうなずくと、「お疲れさまです」と頭を下げて広瀬さんが会議室から出て行く。
急にふたりきりになるとくすぐったい空気に包まれて、ごまかすようにパソコンに向き合った。
「ここを、こうして……」
施工業者と話し合って修正した部分を入力すると、数字で表された明るさのデータが変わる。
CGでも確認すると、不快な光であるグレアはどこにもなくてきれいな空間ができあがっていた。
「いい感じだな」
「はい、これでいきましょう」
パソコンの画面からうしろに立っていた新野さんを振り返る。
黒目がちな瞳と目が合った瞬間、広瀬さんと争った並木通りの設計が頭をよぎった。