クールな社長の耽溺ジェラシー


ぬるめに設定したシャワーの湯を肩からかけると、想像より熱く感じたので体は冷えていたらしい。あのまま帰っていたら新野さんの言う通り、風邪をひいていたかもしれない。

しかし……なにやってるんだろう、私。

仕事で知り合ったばかり、しかも自分に好意を持ってくれている男性の部屋でシャワーを借りるなんて、やっぱり警戒心がなさすぎるだろうか。

勉強や仕事ばかりしていて、まともに男性と付き合うことなくいままで来た。なので、恋愛や男女の駆け引きにうとい自覚はある。

もしかしたら、新野さんが「風邪をひくから」と言った言葉の裏を読み切れずに、誘いに乗ってしまっているのかもしれない。

そもそも、新野さんに彼女がいるのかどうかも知らない。

いたとしても、風呂場には男性もののシャンプーや洗顔料しかなく、洗面所にも女性の気配がなかったので、ひとまずここで修羅場になる確率は低そうだった。

……でも、早く帰ろう。そのほうが安心だ。

バッグの中には簡単なメイク道具しか入れていないので、極力顔を濡らさないように気をつけながらシャワーを浴びた。

用意してもらった服に着替えてリビングへ向かうと、そこには多くのスタンド型のフロアライトが置かれていた。

よく見かける定番のものから最新らしいもの、外国製のものまでいろいろ揃っている。

設計で使うのか、気分で点けるのかわからないけれど、いまはすべて消灯していた。

そんなさまざまなライトが壁に沿って置かれたリビングの真ん中で、新野さんはタオルを肩に掛けてソファに座っていた。Tシャツにスウェットというラフな部屋着に着替えている。


< 58 / 172 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop