クールな社長の耽溺ジェラシー


火照った肌にクーラーのひんやりとした風が当たるのを感じながらそっと近づくと、ついていた目の前のテレビではなく、書類を見ているようだった。

真剣な眼差しに、思わず見入ってしまう。

「なんだ、出たのか」

立ち尽くしたままだった私の気配に気づき、新野さんが振り返った。

「あ、はい。シャワーありがとうございました。ドライヤーも借りました」

私がそばへ行くと、新野さんは書類をテーブルへ伏せた。

「ああ……って、すごい格好だな」

私のほうを向くと、まじまじと見つめてくる。無理もない。

新野さんサイズの服は私にはとてつもなく大きくて、Tシャツは肩から落ちそうになっているし、ズボンは裾を何回も折りあげていた。

「下はいらなかったな」
「いりますって」

たしかにズボンがなくても太ももまでTシャツがあるので、ミニワンピみたいにはなるけれど、そんな格好をここでする気はない。

「ないほうがそそる」
「そっ……そそって、どうするんですか」

自ら誘うような格好をするつもりはない。あきれと警戒を含んで見上げると、新野さんは白い歯を見せて笑った。その爽やかな笑顔からは反省の色は感じられない。

「そんなに怯えなくていい、取って食いやしない。ゆっくり考えてくれたらいいから」
「……はい」

そうか、私は新野さんの気持ちになにかしら答えを出さなくちゃいけないんだ。

はじめてのことに混乱するばかりで、きちんと想いを受け止められていなかったことに気づく。

新野さんは私を仕事仲間だけじゃなく、女性としても見てくれていた。じゃあ、私は――?


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