心理学で、落としてみせる
また次の家庭教師の時間になった

いつものようにインターホンが鳴る

「どうぞ!!」

「ん」

「今日は、先生にプレゼントがあります!」

「は?」

「これ、どうぞ!」

薄い赤色のラッピング

「え、なんで?」

「だって、先生のおかげでプレゼント買えましたから!」

先生は、そっと眼鏡を外した

「…みのり」

「?はい」

「開けていい?」

「あっどうぞ!」

先生はプレゼントのリボンをしゅるしゅるとほどいていく

「……これ…」

中には、いつもお疲れ様!と書かれたメッセージカードに、なんか先生が読みそうな本2冊
と、なんとなくハンカチにした

「みのり……………っ」

「え?わ………っ」

先生の顔が近くて近くて、とっても強く抱き締められた


「…っ先生………?」

なんでこんなことになってるんだろうか

「っ!!!!!!!」

先生は、ばっと私から離れる。真っ赤な顔だった

「わ、悪…い」

「いっいえ……」

しばらくの沈黙が、とても長く感じた
先生が口を開く

「ほ、本当にすまない……。みのりは、好きな人を思って俺を呼んだのに」

「いえ、いいですよ、そんな…」

何言ってるんだ?私は

「とにかく、これ合わせてあと2回の授業、始めましょう」

「あ、あぁ」

今日の授業は、好きな人に対しての態度や目線などだった

「だからみのりがよく目を合わせるひとってのは、お前を慕っているいる可能性が高い」

「そうなんだ…」

「あぁ。あと、みのりが、みのりの好きな人に、ここ教えて、と言われたとする」

「うん」

「こういう時……あぁ、やってみるか」

「?あ、はい」

先生は、さっきかけた眼鏡をまた外し、私を見る

「みのり、なにか、わからないことって、ないかな?」

「えーと……」

「あ、なんでもいいんだ。心理学でなくてもいいから、ない?」

「あ、なら、この連立方程式を…」

「あ、分かった」

そう言うと、先生は机にむかう私の横に来る

「どこ?」

「ここ、です」

「あー、面倒くさいやつだ、それ……」

「あ、分かります?」

「うん、同意見だよ」

「あはは」

「…………ま、こんな感じだな」

「つまり?」

「つまり、目の前にいられると、敵対意識を持ってしまうというわけだ」

先生は眼鏡をかける

「したがって、横からの方がいい」

「なるほど。あ、なら、先生が最後の方、私と話したのは…」

「それは、人間は、意見を尊重されると嬉しいだろう。応用だな」

「そういうことか」

「ん…あ、もう5分もすぎてるな。じゃ、俺はこれで……」

「え……はい、ありがとうございました」

先生は、さっさと帰ってしまった







私はその日から、三矢樹君にドキドキするこがなくなった


そのかわり、先生が恋しくて恋しくて仕方がなかった


< 11 / 16 >

この作品をシェア

pagetop