気がつけば・・・愛
「・・・さん、あゆみさん」

遠くで聞こえる住職の声と
背中に当たる柔らかな感触

ゆっくりと目を開けた間近に
目を大きく開けた住職の顔が見えた

「わっ」

「気分はどうですか?」

起き上がろうとして
肩口を押される

「ここは...?」

天井と住職を交互に見ながら
ようやく自分が布団に寝かされていることを知った


「バランスを崩して
倒れ掛けたのをお助けしたら...
急に意識を失われて...」

心配そうに話す住職


ーーあぁそうだーー


抱きしめられて
目眩がした...

「すみません」

「私は構いませんよ...お茶用意しますね」

「あの・・・」
それよりも聞きたいこと

「ここまで‥どうやって?」

思いつくのはひとつしかないけれど
どうか違っていてほしいと口にした

それなのに

「緊急だったので・・・
私がここまでお運びしました」

“お運び”ということは
荷物と同じ括り

そう言い聞かせた胸に刺さったのは

「軽くて心配になりました」

間違いなく抱きかかえられた証拠だった

「‥すみません」

瞬時に熱くなる頬を誤魔化すように
両手で顔を覆った



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