気がつけば・・・愛

マンションに到着すると
スッカリ冷えてしまった洗濯物を取り入れる

今日は買い物にも行っていない
慌てて冷蔵庫を確認していると

夫から【飲み会】という
短いメールが届いて

ホッとしてソファに座り込んだ

“主婦”から解放されると
良憲さんを思い出す


ーー連絡したいけれど迷惑じゃないかしらーー


携帯の画面を見ながら
点けたり消したりを繰り返し
ようやく決心すると

【今日はありがとうございました。
無事着きました。あゆみ】

短い文章を送った

すると

【こちらこそありがとうございました。
到着の知らせ有難いです。
家は大丈夫でしたか?
何かあればいつでも相談に乗りますし、
何か無くてもあゆみさんに会いたいです。
良憲】


直ぐに届いた返信に心が解れる


ーー会いたいーー


ストレートな文章に
年甲斐もなく頬の緩みを戻せない

お風呂のスイッチだけ入れると
自分の晩御飯も忘れて
良憲さんとのメールに没頭していた

【このメールのやり取りを
消すか携帯をロックするか悩みますか?】

届いた内容に
現実に引き戻される

ーーそうだーー

万が一を想定しなければいけない
夫が浮気しているから‥なんて
短絡的な言い訳は通用しない

【良憲さんとのメールを消せないから
ロックをかけることにします】

答えは決まっていた

それなのに

【あゆみさんとのメールは
2人の心の中と
私の携帯の中にありますから
無理をせず消して下さい】

【わかりました】

あゆみの不安な気持ちを受け止めると言ってくれた良憲さんらしく

選択肢の先には温かな気持ちが待っていた

そのことが嬉しくて
ことある事にメールを送り

離れていても常に寄り添っているかのような
穏やかな気持ちを手に入れた
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