気がつけば・・・愛
良憲さんが裸足のことも忘れて
銀杏の木の下で抱き合っていると

ハンドバッグの中の携帯が振動した


「あ、ごめんなさい」


一歩後方に離れると
ポンポンと頭を撫でられた

ーー私の方が年上なのにーー

5歳も離れているとは思えないほど
甘えている自分が意外過ぎて
携帯を持ったまま確認することもしなかった

良憲さんを見上げて涙目のまま笑顔を作ると
頭に置かれた手が頰におりて
指が涙を拭った

良憲さんに触れられている頰が熱い

トクン‥トクンと
高鳴る鼓動が
触れている手のひらから伝わりそうで
見つめあったまま動かせない視線を
誤魔化すように瞼を閉じて

もう一度良憲さんの胸の中へ

背中に回された手が
トントンと宥めるように
気持ちを鎮めてくれて

自分の居場所を見つけた気分になる

「あゆみさん・・・
ゆっくり話したい」

「はい」


一度ギュッとキツく抱き寄せて
身体を離すと今度はしっかり手を繋がれる

「もう離れたくありません」

そう言って目を細めた良憲さんの顔を
見上げるだけでドキッとして

俯いたままで
裸足の良憲さんと家まで歩いた


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