気がつけば・・・愛
三ヶ月後







・・・









良憲さんの師匠と寛子に証人をお願いして
婚姻届を提出した


「渡部あゆみさん」


良憲さんは繋いだ手に光る指輪に口付けた
恥ずかしくて赤くなる頰を片手で隠していると

「照れてるのも可愛いから隠さないで」

首を傾けて覗き込まれる


「だって」

少し頰を膨らませてみたけれど
やっぱり良憲さんには敵わなくて

繋いだ手に寄り添うように歩く


寺での生活もリズムを作れるようになり
早起きの習慣も身についた

檀家さん達にも大歓迎を受けて
少しずつ居場所が確立されてきた

良憲さんの檀家さん回りや法要も
出かけられる時には同行した

サポートとは言っても
運転手だけのこと

それでも必要とされていることに
安心感と・・・なにより
良憲さんの側に居られることへの
嬉しさが占めていた

「良憲さん」

「ん?なに?」

いつも間近で笑顔を見せてくれる良憲さんと
歩んで行ける幸せを
たまには言葉にしなければと勇気を出す

「愛しています」

「っ」

みるみる大きく見開く目が近づいて

「キャッ」

強引に抱きしめられて
呼吸が苦しくなる

「く、苦しい」

「もぉ〜そんなこと言うの反則!」

ギュウギュウと抱きしめられて
苦しいと文句を言ってみたものの

お姫様抱っこで寝室へ運ばれると
甘い甘い言葉で溶かされる

やっぱり敵わないな〜と
意識を飛ばす寸前に見えたのは

目を細めて「愛してる」と囁く良憲さんの顔だった







運命なんて言葉で片付けられない

遠回りしたお互いの距離

引き寄せられるように交差した二人は

気がつけば・・・愛されていて

気がつけば・・・愛していて

気がつけば・・・離れられない程


愛しい良憲さんの腕の中で

今夜もまた温もりに包まれる






fin




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