人工知能な女の子

君には一日我には一生

午前中にあえてまわらなかったメジャーなアトラクションを回ることに午後の時間を費やした。


まずはジェットコースターに乗った。この遊園地の目玉として推しているだけあるものだった。センカも昇っている時に「おお…!」と声に出していて、悲鳴をあげたりはしなかったがいつものクールな彼女とはテンションが違った。


かなり面白かったようでジェットコースターから降りた後に「ナルセさんもう一度乗りましょう」とまた列に並び直した。


…まさかそれを4回も繰り返すとは流石に思わなかった。



長いジェットコースタータイムの後はお化け屋敷に入った。少しでも良いところを見せようと「僕がいるから大丈夫だよ」なんて張り切っていたが驚いていたのは僕だけで、屋敷内でセンカの表情が変わることはなく、驚いている様子は一切見られなかった。


「の…乗り切った…!」
お化け屋敷から出た後に僕がそう呟くと


「先程のジェットコースターに比べると少し刺激が足りませんでしたね。でもリアクションを見る限りナルセさんを驚かすにはこの程度で充分のようですね。」
センカが小さく頷きながら言った。


「いや、大した事なかったね」
すまして強がると

「ではもう一度行きますか?」
とセンカがお化け屋敷を指差した。


「もう大丈夫です。すみません…」

「わかれば、いいんです」
こんな問答をしていた。


その後息抜きも兼ねて売店でお土産を選んでいた。僕はススキと家族に、センカは博士にお土産を買った。

気がつけばかなりいい時間になっていて、少しずつ辺りも薄暗くなっていた。


そこで僕たちは最後に観覧車に乗ることにした。
朝からずっと2人だったんだけど狭い空間に入るとまた雰囲気が違って少しドキドキした。


少し昇ったところでセンカが
「これも回ってますね、メリーゴーランド、コーヒーカップ、観覧車、人は回るものが好きなんですか?…こんなのが楽しいんですね」と不思議そうな顔をしていた。


「そ…そうだね」
苦笑いしながらそう返すと




センカはしばらく考えた後突然立ってくるくる回りだした。



「何やってるの?」
突然の行動に驚いていると


「どうです?回ってる私」
(失礼なことに一瞬壊れてしまったのかと思ったが正常なようだった)
センカは回るのをやめると改めてどうだったか訊ねてきた。


…すごく可愛かった。普段の僕ならごまかしてしまいそうだけど、2人きりだし恥ずかしかったが思い切って正直に伝えた。


センカは少し驚いた顔をした後、
「そうですか、じゃあ」ともう一周してくれた。


今度はこっちが驚いていると、センカはサービスです。とおどけて笑った。


あまりにも可愛くて、ドキドキして、心臓が壊れるかと思った。笑って流そうとしたがやっぱり恥ずかしくて、すぐに話題を変えてしまった。


「高いねー。センカの家見える?」
そんな話題を振ったと思う。


「本気で言ってるんですか?見えるわけないじゃないですか。」
座席に座りながらセンカは答える。


「冗談だよ…」
最後までセンカに振り回された一日だった。




–こうして僕たちの1日は終わりを迎えた。
駅前に帰ってきた時にはすっかり暗くなっていたから、センカを家まで送った。


「ナルセさんお陰で良い1日が過ごせました。家まで送っていただいたことも含めてありがとうございました。」
別れ際彼女がそういって頭を下げた。


「こちらこそありがとう、楽しかった。」
そう言った後

…あとさ、また誘ってもいいかな。


彼女の目を見て、最後に少しだけ頑張った。


「はい、ぜひお願いします。」
小さく微笑んだ彼女に改めてお礼を言って僕は帰路についた。
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