バイバイ☆ダーリン 恋心編  番外編完結しました
父母が漸く本気で娘と向き合い始めたその後に、ちょっとした変化がやってきた。

何かアルバイトでもしようかと考えている、と優花が言い出したのだ。

やっと外の世界に出られるようになったかと両親は喜んではいるのだが、一方では、自宅近辺だと当時のことを蒸し返す輩がいるのではないかと心配をしている。

あれからもう3年半、されどたかだか3年半、もしかしたら人々は忘れているのかも知れないし、何かの時に思い出すのかも知れないのだ。

その3年半前は、マンションの隣近所で結構有名な話となり、噂が町内にまで拡がって大変な思いをしたのが記憶に新しい。

まあそれも、この家の、当時は未成年の娘がしでかしたことなので、親の責任を問われるのは仕方のないことではあるのだけれど。

優花の両親は分譲マンションを10年程前に購入し、それと同時に家族3人で引っ越して来たのだった。

一流企業に勤める父と専業主婦の母、そして勉強熱心で大人しい小学校高学年のひとり娘と、傍から見れば、絵に描いたような理想的な家庭であった。

しかし、亭主元気で留守がいい!とばかりに、仕事人間の父は帰りが夜中になることが多く、母は時々友人達とランチを楽しみ、服だの靴だのブランド物のバッグだの指輪だのと、買い物三昧だけれど、小言など父は何も言わずに母がやりたいようにさせていたのだ。

そして、優花にも幼い頃からあらゆるモノを買い与え、いくつもの塾を掛け持ちし、周りからは羨望の眼差しを向けられていることで、子供ながら結構な優越感に浸ることが出来たのだった。

そんなこんなで、羽振りの良い父と美人だと評判の母は、優花の理想のカップルとなっていった。

しかし、優花自身はと言うと、近視のために眼鏡を掛けていて、元々はとても可愛らしい女の子なのに、本人に全く自信がなくてちょっと大人しめであるので、クラスでも目立つこともなく、ただ勉強に打ち込んでいただけだった。
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