お見合いだけど、恋することからはじめよう

『……ななみん、今どこ?』

すぐにかかってきた通話の向こう側は出先からだろう。少し騒がしかった。

「家だよ。自分の部屋でテレビ観てる」

あたしは地上波でジブリの映画「耳をすませば」を観ていた。

高校受験を目前にしてそれぞれの人生の岐路に立つ、中学生の少年・少女の初恋の物語だ。
つたない二人のあまりの初々しさに、胸がきゅんきゅんしている真っ最中だった。

『あっそ……でさ、わたし今、六本木で呑んでるんだけど。ななみん、ちょっと、出てこない?』

……ええっ、いきなり?

相変わらずのムチャ振りだ。ちなっちゃんには昔からそういうところがある。

「えぇーっ、今テレビ観てるって言ったじゃん」

あたしはめんどくさそうな声で言った。

『ななみんの家、赤坂見附でしょ?すぐそこじゃん。この時間だったら、まだお風呂に入ってメイクだって落としてないんじゃないの?』

……そうだけどさぁ。でも、ユニクロのルームウェアには着替えてるよ?

『じゃあ、お店の地図はLINEで送るからさ。
なるべく早くね。待ってる!』

そう言って、通話が切れた。

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