お見合いだけど、恋することからはじめよう
「もし、あのとき『彼女』がいたら、エミとラブホに行くどころか、二人きりで呑みにすら行ってなかった。
……こんなことなら、おまえと別れるんじゃなかったなぁ」
目黒先輩はカウンターの上のネグローニを見つめて、問わず語りのようにつぶやく。
「おまえと違って、エミは自分の思ってることをなぁーんにも言わねぇしな。
そもそも仕事以外ではどんな子なのかも知らなかったし、一緒に暮らすようになっても、お互いどこか他人行儀なまんまで、今でもあいつがなに考えてんだか、皆目わかんねぇよ。
今は毎日、生まれた子どもの世話に追われてて、ろくに会話もないしさ。
……ついでに、セックスもねえしよ。
お互い二十代にして、すっかり『レス』だぜ?」
そして、すっかり氷の溶けてしまったネグローニを一口含んで、顔を顰める。