お見合いだけど、恋することからはじめよう

ある日、総務部の「お局さま」であらせられるお方から呼び出された。

何事かと総務部のフロアへ赴くと、

『水野さん、営業企画部との合コン……じゃなかった、「呑み会」があるんだけどさ。
……あなた、行かない?』

お局さまは、とてもあたしを誘ってるとは思えない、苦虫を噛み潰したような顔で言った。

……これは、お誘いを受けてはいても、お断りしなければならないパターンよね?

『……と言っても、あなたに「拒否権」はないんだけどね?』

……はい?

『向こうはどういうわけか、「秘書室の水野さん」を「ご指名」なのよっ。いーい?絶対に来るのよ?営企があたしたちと合コンしてくれることなんて、ほとんどないんだからねっ!
……わかったわねっ!?』


営業企画部は次代の営業戦略のコンセプトを立案する部署で、社内でも「幹部候補生」が集まる部署だ。「寿退職」のために入社した女子社員が多いとされる総務部では、またとないチャンスなのだろう。

……あたしは震えながら、こくこく、と首を縦に振らざるを得なかった。

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