お見合いだけど、恋することからはじめよう
『七海ちゃん、彼はそういう人だったのよ。
自分の出世にならないような結婚なんて、絶対にしない人なのよ』
……だったら。
『……桃子さんは……そんな結婚でもいいんですか?……そんな……出世のためだけの……愛されてもいない人との結婚、なんて……』
あたしはようやく言葉を発した。
『だって……そういう「家」に生まれついちゃったんだもの……仕方ないわ。
それに、もう二十七歳だしね……「政略結婚」の「駒」としては、結構リミットなのよ。
でも、七海ちゃんはまだ、二十四歳だもの。
これから先、きっと素敵な人と出会えるわ』
桃子さんは肩を竦めて、儚げに微笑んだ。
そして『そろそろ、仕事しましょう』と言って、デスクの椅子から立ち上がった。
そのとき……石鹸のようなのに、なぜかスモーキーさも感じられる不思議な香りが、ふわっとやってきた。
ブルガリのブループールオムだった。
「赤木さんの匂い」である。