お見合いだけど、恋することからはじめよう
赤木さんの名古屋への転勤により東京のマンションを引き払うことが決定打となり、あたしは彼の部屋の合鍵を返すことになった。
といっても、もう彼からは何の連絡もなくて、鍵は郵送しようかとも思ったけれど、このまま自然消滅されて、あたし一人が泣き寝入りするのは、どうしても許せなかった。
せめてもの最後のプライドで、ちゃんと「終結」させたかったのだ。
赤木さんの部屋に置いてあったものは、彼がいないときを見計らってすでに「回収」していた。
……もともと、そんなに「私物」を置くほど通ってはいなかったけれど。
もしかしたら、すでに「桃子さんの気配」が部屋の中にあるのではないかと思うとつらくて、手早くまとめてとっとと出てきた。
そして、あたしは会社で彼を呼び出した。
あたし一人では、この期に及んでも彼の顔を見れば、すっかり絆されて丸め込まれるかもしれないので、友佳に付き添ってもらった。
友佳を見た赤木さんには怪訝な顔をされた。
「付き添いが来るなんて、おまえら女子高生かよ?」とでも言いたげな表情だった。
『お返しします』
とだけあたしは言って、震えそうになる手を叱咤激励しながら、合鍵を差し出した。
彼は無言でそれを受け取り、ぐっと握りしめた。
『……七海、行こ』
親の仇でもこれほどか、というくらい、赤木さんへめちゃくちゃガンを飛ばしていた友佳に促され、あたしは彼から背を向けた。
……そんなふうにして、あたしたちは「終わった」のだ。