お見合いだけど、恋することからはじめよう

「えぇっ……だって……わたし……謙二さんから断られた身だし……」

誓子さんは真っ赤になって俯いた。

彩乃さんにつかまれていない方の手は、自分の制服のジャケットの端をぎゅーっとつかんで、もじもじしている。

……ええぇっ、ウソでしょう!?

あの厚顔無恥な「誠子」さんだった誓子さんが(ややこしいなー)なんと「乙女」になってるじゃんっ!?

あたしは天からの(いかずち)に撃たれたかのような衝撃を喰らった。

「誓子さん、よく聞いてください。
ケンちゃんの方は、誓子さん側から断られたって言ってるんです」

彩乃さんは誓子さんを見て力強く言い切った。

「ええっ、そうなんですか?」

あたしは思わず叫んだ。

「そうなのよ、七海ちゃん。誓子さんが断られたっていうのは、どうも誤解じゃないかな?
……それにね、ケンちゃんは副社長室に入るなり、辺りをきょろきょろ見渡して、どうも誓子さんを探してるみたいなの」

彩乃さんがひさびさに大きな笑顔になった。

「誓子さん……よかったですね!」

……あぁ、なんだか自分のことのようにうれしい!

ここのところの、憂鬱でしかたなかった気分が吹っ飛びそうだ。

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