お見合いだけど、恋することからはじめよう
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定時になったので、秘書室のあたしたちはみんな帰途につく準備をする。

彩乃さんは今日、副社長のお母さん……つまり、お姑さんになる人と二人っきりで「会食」らしい。

気の毒なほど憂いを帯びた表情ではあるが「お姑さん」とサシでごはん食べるくらいなら、なんだかんだ言っても副社長とはうまくいってるんじゃないのかな?


誓子さんは週末の葛城社長との映画デートに備えて、これから華丸百貨店へ行って、上から下まで一式コーディネートしてもらって購入するらしい。

「ねぇ、ねぇ、『清楚系お嬢さま』に見えるにはどこのブランドがいいと思う?」

今日は一日、何回となくあたしと彩乃さんにぶつけられた質問だ。

……あなた、あたしが諒くんとのお見合いのとき『あちらの親御さんにもウケのよい、いかにも「いいところのお嬢さん御用達」で「身持ちが固そう」に見える、メタボ級の猫を被れるブランド』として、『ミス・アシダがいいんじゃない?』と、おっしゃってましたよね?

まぁ、少しでも相手によく思われたい、というのが、「恋のはじまり」の醍醐味でもあるけどね。

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