お見合いだけど、恋することからはじめよう
「さてと。邪魔者は去ったし……堅苦しいのは、ここまでにしよう」
それまでとはがらっと違う口調で、田中さんは告げた。神経質そうな表情が、急激に和らいだ。
「このまま、ここで話をしてもいいけど、外に出ようか?もう腹はいっぱいだろ?このまま死んじまっても悔いはない、ってくらい美味そうな顔して全部平らげてたもんな。
……おかげで話しかける隙もなかったよ」
いたずらっ子のように、にやり、と笑う。
……げっ、食い意地の張った子だと思われた?
「あ、あのっ……」
田中さんのリムレスの眼鏡の奥にある、切れ長の目と合う。その目は不思議と冷たい感じはしなかった。
じっ、と見つめられる。
「美味そうにぱくぱく食べる子は、見ていて気持ちいいね。毎日、食卓を囲むのが楽しそうだ。
それに、好き嫌いがないというのはいいことだよ。人間関係においても共通するらしいよ」
確かに、あたしにはこれといった苦手な食べ物はない。そして、人とのつき合いに関しても、今までさほど苦労したことがない。
あの、厄介だった「大橋さん」であるところの誠子さんですら、最近では普通につき合えるようになってきたもんなぁ。
彩乃さんが来てくれたおかげもあるけれど。