お見合いだけど、恋することからはじめよう
諒くんがあたしの肩を引き寄せて、腕の中にすっぽりと包む。
「タクシーでここまで来る間、きみが無事かどうか、おれがどれだけ心配だったと思う?」
諒くんのスーツの胸にひっつけたあたしの頬に、彼の声が振動する。
仕事の際にはつけているのだろう。
さわやかなグレープフルーツやライムの類の、シトラス系の香りがふわりとした。
「ごめんなさい、仕事中だったのに。
……こんな時間に帰ったら親に叱られちゃうから、会社の友達のアパートに泊めてもらおうとLINEをタップしたの。そしたら、諒くんの名前が見えて……」
申し訳なくて、あたしの目に涙が込み上げてきた。
「諒くん、今、なにしてるのかなぁ、って思ってたら、知らない間にスマホを握りしめていてタップしていたの……迷惑かけて、ほんとに……ごめん…なさい」
最後の方は泣き声になっていた。
「諒くんに……ずっと、逢いたいって、思ってたから……」