お見合いだけど、恋することからはじめよう
「ケンちゃ……葛城さんとは知り合いですか?」
彩乃さんが、コーヒーにミルクを入れながら尋ねた。
『葛城さん』というのは、副社長のお客様としてお越しになっていた(株)ステーショナリーネットの社長である葛城 謙二氏のことだ。
明治の時代、万年筆の販売をきっかけに大手の文具メーカーになった「萬年堂」の会長の次男坊で、学生時代にオフィス用品のネット通販会社「ステーショナリーネット」を立ち上げたと聞く。
なんと、彩乃さんの実家のご近所さんで幼なじみなんだそうだ。お金持ちの世界というのは、住む家は広大な邸宅でも、交友関係は猫の額ほど狭いのだ。
「謙二さんは、初めてお見合いしたときの相手だったの。まだ、わたしが二十四、五歳だったわ」
「それで、誠子さ……じゃなくて、誓子さんから断ったんですか?もったいなーいっ!
ステーショナリーネットの若社長ってイケメンで、テレビにも出てる有名人じゃないですかぁ」
ステーショナリーネットはここ五年ほどで急成長していて、マスコミでも話題になる会社だった。
その葛城社長は最近、経済誌やテレビの経済情報番組なんかにもしばしば登場する……イケメン独身社長なのだ。
「わたしが断ったんじゃなくて、向こうに断られたのっ」
……葛城社長、大橋コーポレーションの令嬢を袖にするって、さすがだなぁ。
「初めてのお見合いがそんなハイスペックな人だったでしょ?それからのお見合いでは、なんだか見劣りしちゃって」
確かに、家柄も良く和風美人でモデル並みのスタイルの彼女が、ここまでお見合いがうまくいかないっておかしいもんなぁ。
……つまり、葛城社長のことが、今でも引っかかってるってこと?
そして、つい先刻、その人と……運命の再会!?