一円玉の恋
「でも、幸せだね。こうやって、翠と並んで歩けるってさ。これが、無条件でこの先もずっと続くって、すごい事だよね。だからって当たり前のことにはしないけどね。翠、大事にするからね。絶対この手は離してやらないからね。」
と、繋いでいる手を持ち上げて私に確認させる。
その言葉にはなんか心がホコホコする。
「けど、私はまだまだ崇さんに並んで歩けるほどの価値はないんですよねえ。三年経ってもまだまだです。堂々と並べるようにこの先も努力します。」
と自嘲気味に崇さんに言う。

「なんだよそれ。前にも言ってたよねえ。一円の価値もないとか。どうとか。翠がそうやって思って努力する分にはいいと思うけど。だからって周りがそう思ってるとは考えないでよ。
人の価値なんて簡単に推し量るもんじゃないからね。
一円を無駄にするなあ、って翠に怒鳴り付けられた俺が言うのもなんだけどね。
けど、怒鳴られて、無理矢理スーパーの袋に一円玉捻じ込まれなかったら、俺は世の中舐め腐ったただの勘違い野郎でこの先も生きてるんだと思うんだよね。
あの一円のおかげで翠とこうやって居られるし、まともな事も言えるようになった。年相応に成長できたかな…。はっは…。
だから、それを俺に教えてくれた、翠は俺には勿体ないくらいの女だよね。どんなにお金積んでも手に入らない。一円玉に感謝だね。
そうそう、だからね、あの一円玉は未だに持ってるんだよねえ。ほら!」
と、財布の中から、小さく紙に包まれてる物を取り出して中身を見せてくれた。
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