一円玉の恋

そんな私の態度に美しい女性が、「貴方、面白い子ね。じゃあ、コイツの片想いなんだ。あっは。面白い。」
と、意味不明の事を言ってきた。
ぽかーんとしていると、「ああ、気にしないで」と手を振っている、
「一円玉の話し聞いたわよ。貴方でしょ？若いのにそういう事言えるって偉いわねえ。」と褒めてくれる。
こんな綺麗な女性から褒められるなんて、と心でウキウキしながら努めて冷静に、

「いえ、今の状況が状況なんで、お金を粗末にする人間が許せないだけです。」と至極当然に言った。

「ふーん。そっか。そうだよね。コイツ、実家もそれなりに裕福だから、あんまりお金の苦労とかは分からないのよね。それに、ずっと周りには天才だとかチヤホヤされてたし。だから、結構お金も人も大事にするヤツではないね。」

と、言ったので、山神崇の実家の事は知らないが、やっぱり苦労とかとは無縁なんだと、なんか腹が立ってきて、

「ですよね。だから嫌いなんです。横暴だし！暴君だし！できれば、関わりたくないんです。でも、今はお世話になっているので、大人しくしときます。」

と、悔しそうに言うと、この美しい女性が大笑いした。そして、おもむろにテーブルの上のお皿に気づいて、
「あっこれ美味しそうね。煮込みハンバーグなのかな。美味しそう。」と言ってくれる、私は嬉しくなって、「あ、そうです！」と張り切って答えた。

「私、お腹すいてるんだよね。これ食べてもいい？」と、美しい女性が言ってくれる、もちろんです。ぜひぜひその美しいお口にと、「ええ、どうぞどうぞ！お口に合うか分かりませんが。今、フォーク出しますね。」
と、山神崇の分は無いが、まあいいか。と思いご賞味あれと差し出した。