一円玉の恋
その時、スマートフォンも返してもらえた。
杏子さんからの着信が沢山あったので、折り返してかけた。
もちろん、山神さんが何かに集中している間に。

「もしもし杏子さん、さっきはごめんなさい。
途中で山神さんに携帯取り上げられて。」

「どうせ、そんな事だろうと思った。本当大人気ないヤツよね。」

そうです!おっしゃる通りです。と思うが、そこは、「まあ…そうですね。」と答えておく。

「で、同じ部屋で大丈夫なの、一応釘は刺したけど、なんなら本当にそっち行こうか?」

と冗談でも、凄く嬉しい提案をしてくれた。
が、そこはさっき閃いた事を杏子さんに伝えた。

「あ、大丈夫です。山神さんの事、東京のお父さんって思う事にしたんで、だって前に親のように心配してるって言ってたんで、娘の様に思ってくれてるんだと思ったんです。それに山神さんには心に決めた人がいるので、大丈夫です。」

と力を込めて、そうきっと大丈夫。

「………。」

「ブッぅクッ!そう…そう解釈したのね。クッ」

と、暫しの沈黙の後に杏子さんが何故か笑ってる。

「えっ私何かおかしい事言いました?」

「えっ、あっううん、大丈夫。そっか、分かった。まあ、手は出して来ないとは思うけど、なんかあったら、警察に通報しなさい。」

「あっはい、即、通報します。」

「じゃあ、とりあえず頑張ってね。また、何かあったら連絡して。」

「はい、またします。では。」

と電話を切った。何がおかしいんだろう?と首を傾げながら、山神さんを探しに行こうと振り返ると、真後ろで立っていた。さすがに「うわぁ!」と声を上げ、後ろに仰け反った。
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