一円玉の恋
「山神さん、びっくりさせないでくださいよ。」

ほんとに心臓に悪いからやめてよね。

「……。」

あらっ作家先生様ってば何を黙っているのかしら、それになんか不機嫌だわ。

「どうしました?なんか怒ってます?眉間にシワが寄ってますよ。せっかくのお顔が台無しに…。」

「…覚えてろよ。」

えっ何か仰いました?「んん!何を?です。」
それには答えずに作家先生様は、

「はい。次行くよ。時間がないからね。ドンドン歩くよ。」

と踵を返して行ってしまわれた。

えっ、ちょっと、もう。

「ええ!待って待って。置いてかないで。待って!早いってばお父さーん」

あっ止まった。あっなんかこっち来る。
やばいやばい、顔怖っ!
来る来る来る、こっち来る!
やーぁー、痛い!ほっぺたつねんないでーー。

「ねえ。俺はアンタのお父さんかな?」

「ひがひまふ…」違いますね。怒ってらっしゃる…

「お父さんじゃないよね?」

「ふぁい…」はい、そうですね。顔が怖いです。

「違うよね。」

「ふぁい…ひたひでふ、やまふぁみふぁん」はい、痛いですって、お父様。
顔超怖いですってば。

「もう、言わないかな?」

「ひひまふぇん」
たぶんね…。
「本当かな?」

「ふぁい。ひひまふぇん…」

たぶん…ですけどね。

「クッおもしろ。けっこう左右に伸びるもんだね。」

「ひたひでふ。やまふぁみふぁん。」

痛い!マジで!離して!お願いお父様!

クックックッと意地悪な笑みを浮かべながら、人の両のほっぺをつまんで喜んでいる。
悪魔だ。よしっ通報するぞ!
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