一円玉の恋
「杏子さーん。大好き!」と勢いよくお店に入り杏子さんに抱きついた。うん!大好きだ!
杏子さんもひしっと抱きしめ返してくれる。
ベリッと神山さんが私の襟首を掴んで引き剥がす。
なんでよ。邪魔しないでよ。とバタバタと暴れる。

「暴れたら、他のお客さんに迷惑だよね。翠ちゃんだけ帰る?」

と、そのまま店の外にほっぽりだされそうになる。

「や、やめて!暴れません!許してー。いやー出さないでーごめんなさ〜い。」

と必死に扉にしがみつく。

「本当に暴れないでよ。」と念押しされ、反省してます。と項垂れてみせる。

山神さんがパッと手を離したので、すかさず杏子さんの元に舞い戻り、背中に隠れて。
ベェーだ。とやってやる。

山神さんから、すっごいすっごい黒い大きなものが、揺らめき出した。
やばいわ。ちょっとやり過ぎたかしら。
杏子さんはよしよし、してくれる。
お店の他のお客さんには受けている。ゲラゲラと笑ってくれて、お嬢ちゃん可愛いいねぇ。
負けるなと応援してくれる。
「翠ちゃん、今すぐ強制送還決定!」と約一名だけ、黒い物を漂わせて、息巻いてる。
負けないもん!帰らないもん!とブンブンブン頭を横に振る。
杏子さんが、

「はいはい、二人とも疲れてるんでしょ。ご飯用意するから、仲良く待ってて。」

と収めてくれた。
さすがです杏子さん。仕方なくカウンターに座って、大人しく待った。

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