一円玉の恋
エレベーターで、山神さんと地下の駐車場に行った。
地下まで行ったのは、初めてだし、山神さんの車に乗るのも初めてだ。
山神さん自身、車にはあまり乗らないみたいだ、移動出来るところは公共交通機関を使って移動している。
山神さん曰く、「都会にいる方が車は無駄だね。混むし、いろんな意味でイライラする。」と前に言っていた。
ふーん。そんなものか。と思った事を思い出す。

でも、このおじさん、持ってる車は高級車なんだよね。
腹立つよね。
これドイツ車のめっちゃいい車だよね。
すごく早いタイプのやつ。
お父さんが雑誌のモーターショーの写真見ていいなぁって言ってたもん。
本当、久々の打倒格差社会ってスローガン掲げたくなる。

山神さんに、「はい、乗って。」って助手席のドアを開けてもらったけど、急いで後部座席に乗り込んだ。
あっまた、なんか不機嫌だし。
「なんで前乗らないの?」って聞かれたから、「お嬢様気分を味わいたくて。」と答えたら、「俺は運転手か!」ってますます怒ってた。
だって、だってね。緊張するもんね。
バクバクして話さないといけない事も話せなくなるもんね。

「では、お嬢様どちらまでお送り致しましょうか?」とノッてくれたので、調子に乗って行き先を伝えた。
また、怒ってる。おもしろい、このおじさん!いや、お兄さん。

車が発信して、頃合いを見計らって口を開いた。
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