カラダから、はじまる。

だけどそのとき、わたしの脳裏にあのときの「田中の声」が(こだま)した。

『……彼女のことは学生時代から知ってるので、やはり局長がおっしゃるように、今さら恋愛感情は持てませんね』

田中は、わたしの父の前ではっきりと、そう告げたのだった。

わたしはすでに……彼の「選」から漏れていたのだ。


それに気づいて、ハッとする。

途端に、喉の奥が詰まったようになって、声が出なくなってしまった。


「……あたしが、彼のことをどう思うか、だよね?」

七海が、独り言のようにつぶやく。

「わかった、おねえちゃん……ありがとうっ」

そして、満面の笑みでわたしにお礼を言う。
GWに家族旅行で伊豆に行ったときの、あの写真の笑顔だ。

『なによっ、これっ⁉︎ こんなに髪がばっさばさなのに、バカみたいに笑って、サイアクーっ!』と、七海自身はむくれて、撮った父に悪態をついていたが……

だれからも愛される、天真爛漫な笑顔だった。


同じ父母から生まれた姉妹でも、わたしに(もたら)されることはなかった、

……「かわいい」笑顔だった。

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