課長、サインを下さい!~溺愛申請書の受理をお願いします。
 間近に見る課長の顔。

 切れ長の二重の瞳は今は閉じられている。
 鼻筋はスッと通っていて、唇はやや薄い。

 私、昨夜はこの唇に触れられて…

 その唇に無意識に指先を伸ばした。

 やだ、私ったらなにをしようと…!

 顔が赤くなって、伸ばした指先を止める。
 寝込みを襲っているような気分を振り払いたくて頭を小刻みに振った。
 でも初めて湧き上がったこの気持ちを止める術を私はまだ知らなかった。

 男の人の唇を触ってみたいなんて、初めて感じるわ…。

 その誘惑に抗えず、そっと指先を課長の唇に当てる。
 その瞬間、私の胸がきゅうん、と音を立てた。
 
 苦しいような、甘いような、哀しいような、嬉しいような

 久しく忘れていたその泣きたくなるような感覚に、
 私は悟った。

 ―――ああ、私、課長のことが

 思うと同時に、その言葉が口からこぼれ落ちる。


 「すきです。」

 
 
 
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