無感情なイケメン社員を熱血系に変える方法
田村と美都子、駿太郎、彩月はそれから楽しく昼食を摂った。

駿太郎の高校、大学時代のこと、今の職場のことを話した。

「ランニング?マラソン?駿太郎が?」

「まあ、まあ、凄いわね。羽生くん。どおりで顔つきが男らしくなって、引き締まった体つきになったのね」

田村夫妻は、運動を頑なに避けてきた駿太郎の劇的な変化に驚きを隠せずにいた。

田村は、人を惹き付ける魅力に溢れているにも関わらず、それを鼻にかけることもない彩月を眩しそうに見つめた。

"いつかお前も、側にいてほしいと思える人に出会える"

無表情でキャンバスやパソコンに向かう学生時代の駿太郎に訴え続けた過去。

絵やデザインの才能はあるが、そこに感情は反映されていない。それが芸術家としては欠点でもあり、異端でもあった。

教室の隅で、固く心を閉ざして窓の外を見つめていた駿太郎。芸能人並みの顔のよさに声をかける女子生徒は絶えないのに、誰のことも相手にしない。

そんな駿太郎を放ってはおけず、美術室に引きずり込んだ。田村にも心を許していたとはいえ、それでも完全ではなかった。

ここにいる女性がきっと駿太郎を支えてくれる。田村はどんなことをしても二人を支えていこうと心に誓った。
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