神様、どれほど償えば この恋は許されるのでしょうか?
*★*―――――*★*
朝、駅に着くと、いつものように由紀が改札口の前で待っていた。
「おはよう、由紀ちゃん」
「おはよ…って、今日も梨佳ちゃんだけ?楠原先輩はどうしたのっ!?」
「雨、多いねぇ…もう梅雨なのかな」
「梨佳ちゃん!」
梨佳は、由紀の抗議の声を軽く無視しつつ、持っていた傘を手早く開くと、軽快に歩き始める。
体が嘘みたいに軽い。
登校する学生の波に乗って、坂道をどんどん登って行ける。
「由紀ちゃん、急いだほうがいいよ。雨のせいで、電車少し遅れてるから」
「何度も電話したんだよ?楠原先輩とちゃんと話した?」
梨佳の後を、由紀が息を切らしながら追いかける。
なんて、不思議な感覚なんだろうと、梨佳は思う。
こんなに倦怠感もなく動けるなんて、生まれて初めてかもしれない。
大河の手を振りほどいたあの日から、ずっと、目覚めない夢の中にいるようだ。
――空も飛べそう……
厚い雨雲に覆われた曇天ですら、今の梨佳には好ましく映った。
何でも出来そうな、それでいて、必ず訪れる終わりの予感。
カタルシス。
「由紀ちゃんっ!早く!」
梨佳の無邪気な笑顔に、由紀は思わず息をのむ。
出会った時から、いつもどこか自信がなさそうで、何かを諦めている様子が放っておけなかった。
それが……、こんな梨佳を見るのは初めてだった。
――あの雨の日、あの後、2人に何があったの?
ちゃんと、仲直りしたということなのだろうか。
こんなに笑顔なのだから、
もしかしたら、お互いの気持ちが通じて、つきあうとか、そういったことになったのかもしれない。
ズキン…
由紀の心が鈍く痛む。
でも、なぜだろう?
――じゃあ、楠原先輩は、なぜここにいないの?
ふいに、由紀が立ち止ると、すでに梨佳は坂を上りきった校門の前に立っていた。
笑顔を浮かべたまま、時を止めて由紀を見ている。
――……違う。
由紀は本能的に後ろを振り返る。
緩やかなカーブを描く下り坂の、その雨に濡れた道半ばに、大河がいた。