一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
「着きました。」

抑揚のない声で石田さんが告げるので窓から外を見ると、そこは繁華街。
すぐにドアが開けられ、石田さんに手を差し伸べられる。
断るのも失礼な気がして、その手につかまって車を降りると

「やぁ、来てくれたんだね。」

と、昼間会った時よりもやや高い声で話しかけられた。

豊沢社長が、繁華街の中でも大きな、飲食店やサロンなんかが入っているビルの前に立っていた。
つかつかとこちらに近づいて来たかと思うと
石田さんの耳元で何かを囁いた。

2人ともスーツ姿、知的で聡明なイメージの2人は
まさにお似合い。
思わずぽーっと眺めてしまった。

「じゃあ、また後で。」
私にも聞こえる声で社長が石田さんに告げると、石田さんは頷いて車に戻って行った。

そちらに気を取られていた私は、社長がすぐ隣まで来ていることに気付かなかった。

「行こうか。」

そう言って身を翻し、社長が先ぼど前に立っていたビルの方へ歩いていく。
遅れを取らないように、小走りでついていく。

エレベーターを待っている間も、彼の後ろに立ち、
彼の視界には極力入らないようにした。

服もメイクも髪型も何もかも大雑把で野暮ったいこんな姿が、とにかく恥ずかしかった。
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