一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~
嫌な予感とは的中するもので、その後3人の外商社員に褒められおだてられ、
ワンピース、スカート、たまにボトムスと、着せ替え人形の様に様々な衣装を着せられては脱がされてを繰り返した。

最初のうちは、これいくらするんだろう?とか、いいものは着心地が違うーなんて感動していたけれど、だんだんどうでもよくなってきていた。

「クローゼットにあんなにたくさんの服が入っているのに、まだ必要なの?」

「あれは間に合わせで用意させたものだ。
試着が必要だろう。」

社長が首を縦に降れば購入、横に傾ければ却下という暗黙の了解があるらしく、社長は殆ど口を開かず、似合うというお世辞すら言ってはくれなかった。

外商社員が持ってきた大荷物のうち、まだ開けていない箱には何が入っているのかと思えば化粧品の山。
基礎化粧品から口紅やアイシャドウはもちろん、ビューラーやブラシなどの道具やネイルまで入っているよう。
さすがに全部は試さないよね?と横目で伺っていたら、社長は全て購入すると伝えていた。
私が疲れているのを悟ってくれたみたいだ。

外商社員が帰り、静けさが戻ったのが今。

石田さんが、購入を決めた衣装クローゼットへ運んでいった。
ソファーにだらしなく座り、頭を凭れる。
社長がこちらを見ているのは分かっているが、見栄えなんてもうどうでもいい。

朝起きた時点でさっさと帰っていれば良かった。
社長と過ごすのが意外にも居心地よくて話も弾んでしまったから、すっかり帰るタイミングを無くしてしまっていたんだけど
きっと、本を話題にして私を引き留めていたのも社長の作戦だったんだ、って
今ならわかる。

・・・やられれた。
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