臆病な背中で恋をした
5-1
 お正月休みも終わり仕事初めの日。出社は通常より1時間の遅出で、各部署ごとに軽い清掃と、責任者の挨拶やミーティング。それから、近くのホテルの宴会場を貸しきって毎年、社員総出の新年会を行うのだとか。真下社長の登場はそこで、ということらしい。

 ドレスコードは、男性社員はそもそもスーツだけど、女性社員もラフすぎる格好はNGだって聴いていた。とは言っても結婚式の2次会ってわけでもないし、ワンピースとかツーピースレベルだろうと、本当にシンプルなフォーマル風のワンピースにしたら。ロッカールームが、どこかの婚活パーティの控室みたいになったのでちょっと驚いた。

「コンサの工藤さんとか、本気で社長か日下室長狙ってるしねぇ。他もけっこう新年会をお見合いパーティ代わりにしてる子、多いのよー」

 そういう初野さんも、そこそこ気合が入っているような。

「ま、社長もその辺は好きにやれって感じだから?」

 マスカラを塗り直しながら、三好さんがサバサバと言った。

「あの、社員が社長に挨拶しに行ったりとかするんですか?」

 気掛かりだったのはそれ。もし大勢の前で名前呼びなんかされたら、明日から会社に来られなくなると思う。

「そういう人もいるけどねー、特に強要されたりしないし。社長が適当に歩き回るから、すれ違ったら挨拶するぐらいで大丈夫ー」

 初野さんの言葉に安堵して。

 とにかく目立たないよう隅でじっとしていよう。そう心に決めて、会場へと向かったのだった。
 


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