朧咲夜1-偽モノ婚約者は先生-【完】


変な気分だ。


お隣のことでもやもやするのなら今までもあったけど、今のはそれと時間のずれがある気がする。


「……ま、私の出来ることをやるか」
 

今のところ家事炊事だけなんだけど。


「どうせだったら先生には美味しいもの食べてほし――
 

だ、だからなんで先生を名指しする!
 

無意識に口をついた言葉に心の中でツッコんだ。
 

……今日の自分、色々とおかしいな……。


「……早めに寝よ」
 

と、自戒したところで、手の中のままのスマートフォンが振動した。


「ん? ――えっ」
 

うそっ、先生からだ⁉ え、連絡とかくれていいのっ?
 

短いメッセージを見て一転、私の気持ちは浮足立ってしまった。


こ、これは……美味しいものを作るしかない!
 

俄然気合の入ってしまう私だ。


「なんてゆーか……単純だなー、私」
 

急いで返信をして、もう明日の昼休みが楽しみになっていた。
 

まさか先生から感想をもらえるなんて、思っていなかったから。



『弁当美味かった。ありがとう』

 

一行にも満たない、それだけでとても嬉しかった。

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