高桐先生はビターが嫌い。

「…はい?」



まさか、このタイミングで、チャイムが鳴るなんて思ってもみなくて、あたしは慌てて手ぐしで髪を整えながら、急いで玄関に向かう。

玄関に置いておいた鏡で自分の姿を軽くチェックして、まずは一旦、ドアの覗き穴を静かに覗き込んだ。

…ドアの向こうには、20代前半くらいの男の人が立っている…。

あ、しかもわりとイケメンかも!

もう一人いるような気がするけどよく見えなくて、そのうちにまたチャイムが鳴るから、あたしはすぐにドアを開けた。



「っ、はい」



しかし…開けた、その時だった。



「あ。朝早くにすみません。……アレ?」

「…?」



ドアの向こうには、覗き穴で覗いた通り、20代前半の男の人が2人立っていて。

一人は、会ったことがない知らない人。

しかし、もう一人、隣にいた人は…



「も、もしかして…」

「あ…え、」

「あ、アイリちゃん!?きみ、アイリちゃんじゃない!?」

「!?」



なんと。

一週間ほど前に出会って、連絡先を交換したばかりの“高桐くん”だった。



「た、たか、高桐くん…?なんで…」



…ああ、神様。

なんでこんなことが起こるわけ?

いまこの場所でこの人に出会ったら、確実にヤバイじゃん!


しかもあたしがそう思って固まっていると、その間に高桐くんの隣に立っている男の人が言う。



「え、なにお前。この子と知り合い?」

「うん。この前合コン行ったって言ったじゃん。その時連絡先交換して、家まで送った子」

「は!?何それ、スゲーじゃん!」



っつか運命的じゃね!?

なんて、一人勝手に盛り上がるけれど。

あたしも高桐くんも、お互い素直には喜べない。

いや、喜べるはずがない。


驚きすぎてまともな言葉すら出てこないんだもん。

こんなのってアリ?
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