高桐先生はビターが嫌い。
じっと会話を聞いていたその矢先。

そう口にした市川の言葉は、あたしの予想をはるかに超えていた。

その内容は、あたしにとって意外すぎるものだった。

だって、好き…とかそんな、しかも先生を。予想なんてできない。



「…市川…なんで、」



市川が誰かに恋をしてる、とか付き合ってる、とか…今まで聞いたことは一度もなかった。

それなのに日向にはそうやって言うんだ?なんで…?



「…ムカつく」



壊してやる。

不意にあたしは、そう思った。

ずっと仲間だと思っていた仲間を奪われた嫉妬心?裏切られたような感情?

仲間だったはずなのに、実はアンタなんか仲間じゃなかった。

なんて、まるでそう言われているようで…。

ムカついたあたしは、予想外の展開にまた良いことを思いついた。


…日向は、市川の気持ちは誰にも内緒だって言われていた。

だったら日向が誰かにバラしたフリをして、あたしが高桐本人にバラしてやればいい。

そうしたら、前みたいに…

みんなで、日向に嫌がらせを繰り返していたあの日々に戻れるかもね。


あたしはそう思うと、それ以上は2人の後をつけずに…その場を後にした。

一方の日向が、実はそれ以上の爆弾を抱えていたとは知らずに…。







「……高桐先生」

「…?」

「ちょっといい?…話があるんだけど」



そして、それから数日後。

あたしは放課後、やっと隙を見つけて高桐を呼びとめた。

一方の高桐は何かを見つめていたけど、そんなことはお構いなしで。

あたしがそうやってはなしかけると、高桐は「?…どしたの、急に。俺ちょっと今…」なんて暢気なセリフを口にする。


…今だ。話すなら今しかない。

あたしはそう思うと、言葉を続けて…話し出した。
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