高桐先生はビターが嫌い。

だけど、そうは思ってもその理由はわからないし。

あたしは、その高桐先生の問いかけに頷く。



「…そうですね。今ついさっき来てました」

「だよね!ほんと今だよね!」



で、篠樹何て?

そして、高桐先生がそう聞いてくるから…



「……何か、明日の予定とかを…」

「…明日の予定?」

「ん…いや、よくわからないんですけど、」

「……」



あたしは、ちょっと言いかけて。

でも、万が一内緒だったらマズイか、とやっぱり一応ぼかすことにする。


ま、いいや。

今ラザニア作りますね!


そして、そう言ってキッチンに戻ろうとすると…



「…あのさ、」

「?」



ふいに、高桐先生が口を開いて、あたしはその足をピタリと止める。

返事をして、振り向くと。

そこには少し、不安そうな顔をした高桐先生がいたから。

少し…ほんの少し、胸が痛んだ。

すると、痛んだ瞬間に高桐先生が言った。



「…こんなこと、言うのも…良くない……いや、」

「?」

「可笑しな話、なんだけどさ…」

「……どうしたんですか?」



…途中途中で、そうやって言葉を詰まらせて、高桐先生が何かを言いかける。

その先がわからなくて、あたしが不安でいると。

先生が、言葉を続けて言った。



「…篠樹には気をつけてほしい」

「!」

「や、ほんとに…可笑しなことを言ってるのはわかってるんだけどね。
でも、俺はアイツの親友として言ってるから。もちろん、日向さんのことが大事だっていうのもあるし」

「…」

「とにかく、アイツには気をつけて。じゃないと…」



…また、泣かせちゃうから。

高桐先生はそう言うと、心なしか表情を曇らせて廊下を進んでいく。

……“泣かせちゃうから”?って…。

今のって多分、あたしじゃない………誰………?


…………もしかして、
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