一途な御曹司に愛されすぎてます
 あのとき、夢は夢でしかないと知らなかった私は、場違いの領分に踏み込んで痛い目を見た。

 現実の世界に住む私はガラスの靴なんて履けない。その事実を忘れちゃいけない。

 忘れたら、またあんな目に遭うに決まってるから……。


『あなたが好きです』


 専務さんの言葉と一緒に、あの熱い眼差しを思い出して胸が強くざわめいた。

 息苦しさに似た熱い疼きを感じて、頬が勝手に赤らむ。

 好きだなんて言われたのは久しぶりだ。康平と別れて以来、ずっと恋愛事にはご無沙汰だったから。


 常識的に考えて彼からの申し込みを受けることはできないけれど、専務さんと再会できたことは純粋に嬉しかったし、こんな素敵なお部屋に泊めていただいたご恩もある。

 だから明日、また彼に会ってもいいよね? それは別になにも問題ないよね?
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